SOILーSHOP生物教材製作所 / 自習室

高校生物の予習&復習&自習

【51】膜電位とイオン

普段、細胞外に対する細胞内の電圧(膜電位)は−70〜−60mVに保たれている。

ニューロン(神経細胞)の細胞膜が活動電流などの刺激を受けると、刺激された部分の膜電位が瞬間的に逆転する。

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膜電位の記録

細胞膜の内外で電位差が生じること(分極)の原因は、イオンの濃度差で説明できる。

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静止電位&活動電位

普段から、ナトリウムポンプは、カリウムイオンを細胞内に取り込み(能動輸送)、ナトリウムイオンを細胞外に放出(能動輸送)している。

また、カリウムチャネルの一部はカリウムイオンを細胞外に放出(受動輸送)している。

その他のイオンの濃度差もあって、全体的に細胞内に陽イオンが少ない状態となり、膜電位は−70〜−60mV(静止電位)に保たれる。

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静止電位

活動電流などによって、膜電位が閾値を越えて変化すると・・・。

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活動電位

①先に、電位依存性のナトリウムチャネルが開いてナトリウムイオンが細胞内に流入し、細胞膜内外の電位差(分極)が解消(脱分極)する。細胞内外でナトリウムイオンの濃度差が解消しても、カリウムイオンは細胞内に多いため、瞬間的に+40~+50mVの膜電位(活動電位)が生じることになる。

②続いて、電位依存性のカリウムチャネルが開くとカリウムイオンが細胞外に流出し、再び細胞膜内外の電位差が生まれる(再分極)。

③再分極の直後は、細胞内外のイオンのバランスが普段と違うため、普段より細胞膜内外の電位差(分極)がやや大きい状態(過分極)になってしまう。

やがて、ナトリウムポンプやカリウムチャネルによって、ナトリウムイオンは細胞外に多く、カリウムイオンは細胞内に多い状態へと回復する。

イオンの濃度差が普段通りに戻るまでの期間は、刺激を受けても脱分極できない(不応期)。

【補足】

  • 膜電位(細胞外に対する細胞内の電圧。)
  • 静止電位(平常時の膜電位。)
  • 活動電位(興奮時の膜電位。)
  • 分極(細胞膜などの生体膜を挟んで、電位差が生じること。)
  • 脱分極("分極“を脱すること。活動電流をきっかけに電位依存性のナトリウムチャネルが開き、短時間でナトリウムイオンが細胞内へ流入することによる。)
  • 再分極(再び"分極“すること。脱分極をきっかけに電位依存性のカリウムチャネルが開き、短時間でカリウムイオンが細胞外へ流出することによる。)
  • 過分極(再分極の結果、一時的に静止電位以上の電位差が生じること。ナトリウムポンプなどの働きにより、やがて静止電位に戻る。)
  • 能動輸送(膜を挟んで、低濃度側から高濃度側へ、濃度勾配に逆らう物質の移動。エネルギーを必要とする。)
  • 受動輸送(膜を挟んで、高濃度側から低濃度側へ、濃度勾配に従う物質の移動。エネルギーを必要としない。)
  • チャネル(特定の物質だけを、濃度勾配にしたがって選択的に通す膜タンパク質。)
  • 電位依存性チャネル(電気的な刺激に反応して開閉するチャネル。)
  • 不応期(活動電位の発生直後は、細胞膜内外のナトリウムイオンとカリウムの濃度が、通常とは異なるため、活動電流などの刺激があっても活動電位が発生しない。)

【参考資料】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
  • 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂