SOILーSHOP生物教材製作所 / 自習室

高校生物の予習&復習&自習

【103】半保存的複製

メセルソン&スタール

DNAが複製される際に、二重鎖が一本鎖2本に解離し、それぞれを鋳型鎖として相補的な新生鎖が新たに複製されるしくみを〈半保存的複製〉という。

DNAの半保存的複製は、二重らせん構造を発表したワトソン&クリック(1953年)によってすでに予想されていたけれど、その予想(仮説)の正誤を実験で確かめた(検証)したのはメセルソン&スタール(1957年)だった。

DNA(デオキシリボ核酸)の分子には、C(炭素)、H(水素)、O(酸素)、P(リン)、N(窒素)の5種類の元素が含まれている。

14N(窒素)の原子量はふつう14(6×1023個の窒素原子を集めると約14gになる)だけれど、やや重い原子量15N(窒素の同位体)が存在する。

大腸菌をこの15Nを含む培地で培養することで、ふつうよりやや重いDNA(二重鎖の両側に15Nを含む)をもった大腸菌が手に入る。

この大腸菌をふつうの14Nを含む培地に移し、大腸菌が分裂するたび(約30分!)に、大腸菌の一部を塩化セシウム水溶液(ややとろみがある)に移して〈密度勾配遠心分離〉にかける。

もし、DNAが半保存的複製を行うなら、分裂前のDNA(15N&15N)が最も重く、1回目の分裂後のDNA(15N&14N)は中程度の重さで、2回目の分裂後にはじめて得られるDNA(14N&14N)は最も軽くなるはず。

二重らせん構造&半保存的複製

メセルソン&スタールの実験結果は仮説から期待される通りで、最も重いDNA(15N&15N):中程度の重さの(15N&14N)、最も軽いDNA(14N&14N)の比率は、1回目の分裂後に0:1:0、2回目の分裂後に0:1:1、3回目の分裂後に0:1:3・・・となった。

【補足】

  • 半保存的複製(DNAが複製される際に、もとの二重鎖が一本鎖2本に解離し、それぞれを鋳型鎖として相補的な新生鎖が新たに複製されるしくみ。)
  • 原子量(ある原子を6×1023個(アボガドロ定数=1mol)だけ集めると、おおよそ、その原子の原子量に相当する重さ〔g〕になる。)
  • 分子量(ある分子を6×1023個(アボガドロ定数=1mol)だけ集めると、おおよそ、その分子の分子量に相当する重さ〔g〕になる。)
  • 密度勾配遠心分離(塩化セシウム水溶液(ややとろみがある)と混合して遠心分離することで、混合したDNA分子を、密度ごとに分離できる。)
  • 細胞分画法(細胞を冷却しながらホモジェナイザーで破砕し、破砕した残骸を遠心分離器で分離する。遠心分離器の回転速度を上げるたびに沈殿物を回収すれば、様々な細胞小器官を、大きさごとに分けること(分画)ができる。)

【参考資料】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
  • 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂