【99】膝蓋腱反射
床に足が付かないように腰掛け、膝関節が自由に動く状態で膝の下をたたくと、無意識に膝から下が跳ね上がる。これは、①膝下をたたかれることで、②膝関節を伸ばす伸筋が伸ばされたことを筋紡錘(感覚器)が刺激として受容し、③感覚神経を介して脊髄に興奮が伝わり、大脳を介さずに(無意識のうちに)、④運動神経を介して膝関節を伸ばす伸筋と、膝関節を曲げる屈筋に興奮が伝わり、⑤伸筋は興奮して収縮し、屈筋は抑制されて弛緩することで、⑥膝関節が伸びることによる。
細胞内のATPが不足すると、神経の伝導や筋肉の興奮が円滑に進まなくなり、膝蓋腱反射が起こりにくくなる。ビタミンB1(チアミン)は脱水素酵素の補酵素として、細胞内の呼吸(糖を分解してATPを合成する反応)に関わっており、脚気(ビタミンB1欠乏症)では、呼吸によるATP合成が滞り、膝蓋腱反射が起こりにくくなる。
日常生活では膝蓋腱反射のおかげで、体が後に倒れそうになると膝蓋腱が引き延ばされて瞬間的に膝関節が伸びることで、無意識に直立姿勢を保つことが出来る。
【補足】
- 中枢神経系(大脳、中脳、小脳、間脳、延髄、脊髄からなり、多数の介在ニューロンがシナプスを介して興奮を伝達することで、複雑なネットワークを形成している。)
- 脊髄(中枢神経の一部で、脊椎骨に囲まれている。屈筋反射や膝蓋腱反射などの中枢になる。)
- 靱帯(骨と骨を結ぶ結合組織。大腿骨と脛骨を結ぶ内側側副靱帯、大腿骨と腓骨を結ぶ側副靱帯など。)
- 腱(筋肉と骨を結ぶ結合組織。下腿三頭筋と踵骨を結ぶアキレス腱や、大腿直筋と脛骨を結ぶ膝蓋腱など。)
- 反射弓(感覚神経から、脳を介さずに運動神経に興奮が伝わる経路。)
- 伸筋(関節を伸ばすときに収縮し、関節を曲げるときには弛緩する筋肉。膝関節では、外側広筋、大腿直筋、内側広筋など。)
- 屈筋(関節を伸ばすときには弛緩し、関節を曲げるときに収縮する筋肉。膝関節では、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腓腹筋など。)
【参考資料】