SOILーSHOP生物教材製作所 / 自習室

高校生物の予習&復習&自習

【11】受動輸送〜チャネル&担体

“エンドサイトーシス”は細胞膜で包み込んでいるだけで、細胞膜を”通過“しているわけではない。素性の知れない物質を何でもかんでもプライベートな”細胞質基質“に取り込むわけにはいかないのだ。

一方で、細胞が生きていくためには、細胞膜で(ミトコンドリア、葉緑体、小胞体、液胞などの生体膜でも!)、必要に応じて特定の物質を通過させなければならない。とはいえ、細胞膜(生体膜)の脂質二重膜は、”小さくて極性のない“物質ほど通しやすいけれど、”大きくて極性のある“物質ほど通しにくい。そこで”膜タンパク質“の出番となる。

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選択的透過性と膜タンパク質

細胞膜などの生体膜において、濃度勾配にしたがう(濃度の高い方から低い方への)物質の移動を「受動輸送」という。受動輸送は、膜内外の濃度差が解消する現象なので、それぞれの物質だけが通過できる”孔(チャネル)”や”仕掛け(担体)”を用意するだけで、エネルギー(ATP)は必要ない。

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リガンド依存性チャネル

リガンド依存性イオンチャネルは、膜タンパク質の一部が受容体になっていて、リガンド(受容体に結合する物質のこと)が結合すると、膜タンパク質の立体構造が変化して”孔”が開く。ただし、チャネルごとに“孔”を通れる物質は決まっている。

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電位依存性チャネル

電位依存性イオンチャネルは、膜内外の電位差が変化すると、膜タンパク質の立体構造が変化して”孔”が開く。やはり特定の物質しか“孔”を通れない。例えば、神経細胞ではふつう細胞外に対して細胞内の電位は“ー”になっているけれど、何かのきっかけで膜電位が変化すると、ナトリウムイオンだけを通す”電位依存性のナトリウムイオンチャネル”や、カリウムイオンだけを通す”電位依存性のカリウムイオンチャネル”が開く。

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グルコーストランスポーター(担体)

チャネルのような”孔”ではなく、機械的な”仕掛け”によって物質を輸送する膜タンパク質のことを”担体”と呼ぶ。例えば、”グルコーストランスポーター”という担体は、グルコース(C6H12O6)が結合すると立体構造が変化して膜の反対側に開く“仕掛け”になっていて、グルコースを細胞外から細胞内へ”受動輸送“する。(大抵の細胞は、呼吸の基質として常にグルコースを消費しているので、細胞内の方が、グルコース濃度は低い!)

【補足】

  • 選択的透過性(細胞膜/生体膜が、特定の物質だけを通過させる性質。濃度勾配に従う受動輸送と、濃度勾配に逆らう能動輸送がある。)
  • 受動輸送(細胞膜/生体膜を介した物質輸送のうち、濃度勾配に従うもの。ATPの化学エネルギーを必要としない。) 
  • チャネル(特定の物質だけを、濃度勾配に従って輸送する”孔”になる膜タンパク質。)
  • 担体(特定の物質だけを、濃度勾配に従って輸送する”仕掛け”をもった膜タンパク質)
  • アクアポリン(水分子だけを輸送するチャネル。)
  • リガンド依存性チャネル(リガンドが結合したときだけ”孔”が開くチャネル。特定の物質(リガンド)を受けとる受容体を兼ねている。
  • 電位依存性チャネル(細胞膜/生体膜の内外に一定の電位差が生じたときだけ”仕掛け”が作動するチャネル)
  • グルコーストランスポーター(グルコースを輸送する担体)

【参考資料】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店