SOILーSHOP生物教材製作所 / 自習室

高校生物の予習&復習&自習

【66】アメフラシ&鋭敏化

アメフラシ(軟体動物/腹足綱/ウミウシ類)の“水管“を刺激すると”鰓“を引っ込める。(反射)

さらに、”水管”を刺激し続けると、やがて“鰓”を引っ込めなくなる。(慣れ)

ところが、“水管”を刺激すると同時に、“尾”も刺激すると、“水管”へ弱い刺激を与えるだけで“鰓”を大きく引っ込めるようになる。(鋭敏化)

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アメフラシの”鰓引っ込め反射“の鋭敏化

短期的な“鋭敏化”では、尾からニューロンの刺激によって、水管からの感覚ニューロンの“神経終末”のK+チャネルが不活性化し、“神経終末”の活動電位の持続時間が長くなる。

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短期の鋭敏化

神経終末の活動電位が持続することでCa2+の流入量が増え、神経伝達物質も長い時間放出される。神経伝達物質の分泌量が増えれば、シナプス後細胞のEPSP(興奮性シナプス後電位)も大きくなり、鰓に続く運動ニューロンに活動電位が発生しやすくなる。

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短期の鋭敏化→長期の鋭敏化

アメフラシの水管と尾をさらに刺激し続けると、やがて水管からの感覚ニューロンの“神経終末“が分岐して、鰓に続く運動ニューロンとのシナプスが増える。

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長期の鋭敏化

シナプス数が増えることで、”水管”の感覚ニューロンからの興奮だけでも、”鰓”へ向かう運動ニューロンに安定して活動電位が生じるようになる。(長期の鋭敏化)

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慣れ&鋭敏化×短期的&長期的

【補足】

  • アメフラシ(軟体動物門腹足鋼。巻貝の仲間。貝殻を失った “海のナメクジ”。)
  • 水管(海水を取り込んで、酸素吸収&二酸化炭素放出や老廃物の排出などを行ったり、海水を噴射して移動したり。貝やイカなどの軟体動物の他、ウニやヒトデなどの棘皮動物にも同様の器官を持つ。)
  • 活動電位(電位依存性Na+チャネルが開いてNa+が流入することで脱分極が起こり、直後に電位依存性K+チャネルが開いてK+が流出することで再分極がおこる。)
  • シナプス(ニューロンとニューロンの接続部。シナプス前細胞から分泌された神経伝達物質が、シナプス後細胞の受容体に結合することで”興奮が伝達”される。)
  • エキソサイトーシス(細胞内の小胞と細胞膜が融合することで、小胞内の物質が細胞外に放出される現象。)
  • エンドサイトーシス(細胞外の物質を、細胞膜で包み込みながら小胞をつくり、細胞内に取込む現象。)
  • EPSP(興奮性シナプス後電位。神経伝達物質の受容&Na+流入によって、シナプス後細胞の細胞体に生じる膜電位。閾値以上のEPSPが生じると、周辺の電位依存性Na+チャネルも一斉に開いて大量のNa+が流入し、活動電位が発生する。)

【参考資料】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
  • 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
  • 池谷裕二(2013).『単純な脳、複雑な「私」』.講談社
  • 池谷裕二(2007).『進化しすぎた脳』.講談社