【89】ターンオーバー
多細胞生物の個体を構成する細胞や、細胞を構成する有機物は、常に分解されながら合成されている。新しい細胞や有機物が、古い細胞や有機物と入れ替りながら、”同じ個体”や”同じ細胞”として生きている。
皮膚の最も外側の角質層は、死細胞が積み重なっている。ウイルスは生きた細胞に感染して増殖するため、死細胞からなる角質層には感染できない。
角質層の下で分裂し続ける幹細胞は、自己複製能力と、ケラチンを蓄積した角質細胞(角化細胞)へ分化する能力の両方をもっていて、娘細胞の片方は幹細胞に、もう片方は角質細胞(角化細胞)に分化する。
小腸の”柔毛”の谷間にある”腸腺”では、腸幹細胞が分裂を繰返している。
腸幹細胞も、細胞分裂を繰返す能力と、小腸上皮細胞へ分化する能力の両方をもっていて、片方の娘細胞は腸幹細胞に、もう片方の娘細胞は小腸上皮細胞に分化する。
小腸上皮細胞は、2~4日かけて柔毛の先端向かって移動し、やがて脱落する。
【補足】
- ターンオーバー(全体としては同じ外観や構造を保ちながら、個々の構成成分が入れ替る現象。)
- 新陳代謝(新しいものと古いもの(新陳)が、入れ代わる(代謝)こと。)
- 動的平衡(個々の構成成分が入れ替りながら、全体として同じ外観や構造が保たれている状態。)
- ケラチン(爪や髪の毛の主成分となるタンパク質。細胞骨格の中間径フィラメントの構成成分で、細胞膜や角膜などの生体膜を裏打ちして”形”を保っている。)
- 細胞周期(多細胞生物の細胞の一部は、間期と分裂期を周期的に繰返している。)
- 幹細胞(Stem cell/多細胞生物の細胞の中で、自己複製能力と特定の細胞の分化する能力の両方をあわせもつ細胞。)
- 生理的再生(多細胞生物の組織では、幹細胞から分化した細胞によって、定期的に細胞が入れ替る。)
- 外傷的再生(傷ついた組織では、幹細胞の増殖&分化や、脱分化した細胞の増殖&再分化によって、失われた細胞が補充される。)
- 生体防御(物理的・化学的な方法で体内への病原体の侵入を防いだり、体内に侵入した病原体を排除するしくみ。)
- 角質層(皮膚の最も外側にある死細胞の層。ウイルスは生きた細胞に感染して増殖するため、死細胞には感染できない。)
- 粘液(消化管や鼻腔、気管などの内壁は、粘液に覆われていて、細菌などの異物の付着や増殖を防いでいる。)
- リゾチーム(細菌の細胞壁”ペプチドグリカン”を特異的に分解する酵素。だ液や涙などの成分。総合感冒薬にも含まれている。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 河本宏(2011).『もっとよくわかる!免疫学』.羊土社
【88】小腸上皮細胞
【補足】
- 小腸(胃と大腸の間にあたる消化管。内壁には多数の突起(絨毛)がある。グルコースやアミノ酸など様々な栄養素を血液中に吸収する。)
- 絨毛(小腸の粘膜側にある多数の突起。小腸内壁の表面積を広げることで、栄養素を吸収できる面積を増やしている。)
- 微絨毛(小腸上皮細胞の粘膜側にある多数の突起。)
- 蠕動(小腸や大腸の外壁にあたる環状の平滑筋が、時間差で収縮&弛緩することで、消化管の内容物が肛門側へ押し出されていく。ミミズが蠕く様子を連想させる。)
- 受動輸送(生体膜を挟んで、濃度の高い側から低い側に、物質を輸送すること。エネルギーを消費しない。)
- 能動輸送(生体膜を挟んで、濃度の低い側から高い側に、物質を輸送すること。エネルギーを消費する。)
- ナトリウムポンプ(ATPの化学エネルギーを使って、ナトリウムイオンを)
- 共役輸送体(複数の物質を輸送する膜タンパク質。片方の物質の受動輸送をエネルギー源として、もう片方の物質を能動輸送する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【87】コムギの進化
種子植物は、減数分裂で配偶子(卵細胞&精細胞)を作り、配偶子が受精して受精卵ができる。野生コムギ(2n=14)では、減数分裂で配偶子(n=7)を作り、配偶子が受精して受精卵(2n=14)ができる。
二倍体の個体(2n)どうしで交雑した場合、生まれた子(雑種第1代/F1)は両親から受け継いだゲノムを1組ずつ持つことになる。
両親が別種の場合、子(F1)が持つ2組のゲノムは互いに異なるため、減数分裂の際に“相同染色体”どうしで対合できず、正常な配偶子ができないために、孫(雑種第2代/F2)は生じない。
両親が別種の場合でも、子(F1)のゲノムが倍数化して“全体として二倍”になれば、減数分裂の際に“相同染色体”どうしで対合して正常な配偶子ができるので、孫(雑種第2代/F2)が生じて新たな種(品種)となる可能性がある。
両親が別種の場合、子(F1)が持つ2組のゲノムは互いに異なるため、両親から受け継いだ2つのゲノム(A&B)を合わせて、1つの新たなゲノム(AB)と見なすこともできる。
【補足】
- ゲノム(ある生物が持つ一揃いの遺伝情報。ヒトでは染色体23本分にあたる。)
- 核相(ゲノムのセット数。ゲノムのセット数と染色体数を組み合わせて表す。例えばヒトの体細胞の核相は2n=46、ヒトの卵細胞や精細胞の核相はn=23と表すことができる。)
- 単相(1組分のゲノムを持つ状態。減数分裂から接合・受精までの期間にあたる胞子・配偶体・配偶子は、単相となる。)
- 複相(2組分のゲノムを持つ状態。接合・受精から減数分裂までの期間にあたる胞子体は、複相となる。)
- ⚪︎倍体(⚪︎組分のゲノムを持つ個体。)
- 相同染色体(大きさや形が同じ染色体。互いの染色体の同じ位置に、同じ形質に関する対立遺伝子がある。)
- 対合(減数分裂の第一分裂において、相同染色体どうしが隣り合って結合し、一塊の二価染色体となる。紡錘体は、赤道面に並んだ染色体を、“一塊”ごとに2つに分割する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【86】遺伝子頻度
【補足】
- 表現型(個体がもつ形態や性質などの特徴。)
- 遺伝子型(それぞれの個体の表現型を決める対立遺伝子の組合せ。)
- 遺伝子頻度(ある遺伝子が、集団内の全ての対立遺伝子に占める割合。)
- 遺伝子プール(集団としてもつ全ての対立遺伝子。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【85】小胞体とゴルジ体
【補足】
- リボソーム(mRNAの塩基配列をもとにアミノ酸を連結し、ポリペプチド鎖を合成する細胞小器官。rRNAとタンパク質の複合体。)
- 粗面小胞体(リボソームが多数付着した小胞体。電子顕微鏡で観察すると、リボソームが付着した表面が“ザラザラ”しているように見える。)
- 滑面小胞体(リボソームが付着していない小胞体。電子顕微鏡で観察すると、表面が滑らかに見える。)
- ゴルジ体(タンパク質や糖鎖などの物質を、濃縮・加工する細胞小器官。小胞体側を“シス面”、細胞膜側を“トランス面”と呼ぶ。)
- 分泌小胞(ゴルジ体の“トランス面”から生じる小胞。細胞膜と一体化して内部の分泌物を細胞外に放出する。)
- エキソサイトーシス(細胞内の小胞が細胞膜と一体化することで、内部の物質を放出する現象。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 京都産業大学().古くて新しいゴルジ体ータンパク質の加工から細胞分裂まで関わる驚異のメカニズムー.kyoto-su.ac.jp.2021/10/30
【84】紡錘体&モータータンパク質
【補足】
- 微小管(細胞骨格の中で“最も太い”けれど“微小”管。タンパク質“チューブリン”が螺旋状に重合した繊維。)
- ダイニン(微小管の表面を、+端からー端に向かって歩くモータータンパク質。“歩く”際にはATPを消費する。)
- キネシン(微小管の表面を、ー端から+端に向かって歩くモータータンパク質。もちろんATPを消費する。)
- モータータンパク質(ATPと結合・分解し、その立体構造が変化することで、ATPの化学エネルギーを運動エネルギーに変換するタンパク質。)
- 紡錘体(分裂期に現れる。細胞の両極から伸びた紡錘糸/微小管が、赤道面に並んだ染色体に結合すると、全体的に糸巻形/紡錘形に見える。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【83】DNA複製フォーク
DNAポリメラーゼは、“既にあるヌクレオチド鎖(プライマー)”の3’末端に“新たなヌクレオチド”を付加することで、新生鎖を合成していく。
実際の細胞内では、リーディング鎖を合成するDNAポリメラーゼと、ラギング鎖を合成するDNAポリメラーゼは、DNAヘリカーゼと連結して一塊の“複製装置"となっている。
【補足】
- DNAヘリカーゼ(DNAの二重螺旋を“ほどく”酵素。)
- DNAポリメラーゼ(ヌクレオチド鎖の“3‘末端”に、新たなヌクレオチドを付加する“DNA合成酵素”。プライマーを“5‘末端”側から分解する“ RNA分解酵素”でもある。)
- DNAリガーゼ(DNAのヌクレオチド鎖の3’末端と5‘末端を連結する酵素。)
- プライマー(DNAポリメラーゼは、“すでにある”ヌクレオチド鎖しか伸長できない。先に短い RNAが鋳型ヌクレオチドに結合し、DNAポリメラーゼが結合するためのプライマー“釣り針”となる。)
- デオキシリボヌクレオチド3リン酸(ヌクレオチド鎖の材料となる。A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)をそれぞれ構成要素とするdATP、dTTP、dGTP、dCTPの四種類がある。いずれも2個のリン酸が外れてヌクレオチド鎖の3’末端に結合する。)
- 複製フォーク(DNA複製の際、二重螺旋がほどけて“二又のフォーク”の様な姿となる。)
- リーディング鎖(DNA複製の際、“複製フォーク”の根元に“3‘末端”を向けて伸長していく“新たなヌクレオチド鎖”。)
- ラギング鎖(DNA複製の際、“複製フォーク”の先端に“3‘末端”を向けて伸長していく“新たなヌクレオチド鎖”。)
- 岡崎フラグメント(ラグング鎖が伸長する際に、断続的に作られる短いヌクレオチド鎖。DNAリガーゼによって連結され、長いヌクレオチド鎖になる。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【82】左心室の容積と内圧変化
ヒトの心臓は、左右の心室が連動して収縮することで、血液を肺(肺循環)と全身(体循環)へ送り出す。
心臓の右半分(右心房&右心室)は、体循環から戻ってくる静脈血を肺循環に送り出している。
心臓の左半分(左心房&左心室)は、肺循環から戻ってくる動脈血を体循環に送り出す。
①房室弁が開くと、圧力の高い左心房から圧力の低い左心室に動脈血が流れ込んで、左心室の容積が増大する。
②房室弁が閉じて心筋が収縮し、左心室の内圧が上昇する。
③大動脈弁が開くと、圧力の高い左心室から圧力の低い大動脈に動脈血が流れ出し、左心室の容積が減少する。
④大動脈弁が閉じた後も心筋が収縮して、左心室の内圧が低下する。
【補足】
- 静脈血(全身から心臓を経て肺に戻るまでの血液。酸素ヘモグロビンの割合が低い。)
- 動脈血(肺から心臓を経て全身に向かう血液。酸素ヘモグロビンの割合が高い。)
- 静脈血(心臓へ血液を送り込む血管。)
- 動脈血(心臓から血液を送り出す血管。)
- 房室弁(心房から心室への血流を調節する弁。)
- 大動脈弁(左心室から大動脈への血流を調節する弁。)
- 2心房2心室(哺乳類と鳥類の心臓は、静脈血が流れる右心房&右心室と、動脈血が流れる左心房&左心室の、合わせて2心房2心室に分かれている。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【81】細胞周期とDNA合成
細胞周期(G1期・S期・G2期・M期)の中でも、M期(分裂期)の細胞だけは、染色体が凝集していることから、顕微鏡観察で見分けることができる。
細胞周期の長さ(細胞数が2倍に増える時間)が分かっていれば、顕微鏡観察した細胞数の比率から、M期(分裂期)の長さを計算できる。
一方、G1期(DNA合成準備期)、S期(DNA合成期)、G2期(分裂準備期)の長さを調べるために、放射性のチミジン(DNAの材料)を細胞に取込ませる方法がある。
放射性のチミジンを、ごく短い時間だけ細胞が取込むと、その時にちょうどS期(DNA合成期)にいた細胞だけが放射性標識される。(放射線を出すようになる。)
そのまま細胞を培養を続け、”S期(DNA合成期)の終わり間近で標識された細胞”がM期(分裂期)に到達するまでの時間(M期の細胞に”放射性標識された細胞”が現われるまでの時間)から、G2期(分裂準備期)の長さが分かる。
さらに培養を続け、”S期(DNA合成期)の終わり間近で標識された細胞”がM期(分裂期)を出るまでの時間(M期の細胞のうち”放射性標識された細胞”が一定数で変化しなくなるまでの時間)がG2期とM期の合計時間になることから、M期(分裂期)の長さが分かる。
やがて、”S期(DNA合成期)に入った直後に標識された細胞”がM期(分裂期)に到達するまでの時間(M期の細胞のうち”放射性標識された細胞”が減り始める時間)がS期とG2期の合計時間になることから、S期(DNA合成期)の長さが分かる。
細胞周期(細胞数が2倍に増える時間)の長さが分かって入れば、S期(DNA合成期)、G2期(分裂準備期)、M期(分裂期)を除くことで、G1期(DNA合成準備期)の長さも分かる。
では、放射性チミジンを長時間取り込み続けると・・・。
やがて全ての細胞が放射性標識される。
【補足】
- チミジン(DNAを構成するチミン塩基を含む化合物。)
- 放射性チミジン(分子内の水素を、放射性の三重水素に置換したチミジン。放射線を発する。)
- 三重水素(トリチウム。水素の放射性同位体。陽子1個と中性子2個からなる原子核をもつ。半減期12.32年でヘリウム3にベータ崩壊する。)
- オートラジオグラフ(分子を構成する元素の一部を放射性同位体に置換して標識し、分子の所在を追跡する手法。)
- G1期(DNA合成準備期。細胞分裂の後、DNA合成が始まるまでの期間。)
- S期(DNA合成期。染色体が複製され、DNA量が倍増する時期。)
- G2期(分裂準備期。DNA合成の後、細胞分裂が始まるまでの期間。)
- M期(分裂期。染色体の配置などから、さらに前期、中期、後期、終期に分けられる。)
- G0期(分裂休止期。細胞分裂の後、特定の形状・機能をもった細胞に分化する期間。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【80】競争的阻害と非競争的阻害
“競争的阻害剤”は、酵素の活性部位を基質と奪い合うことで、酵素反応を阻害する。
“非競争的阻害剤”は、酵素の活性部位以外の部分(アロステリック部位)に結合することで、活性部位も含めて酵素タンパク質の立体構造を変化させ、酵素反応を阻害する。
“競争的阻害”では、基質の濃度が高くなると、阻害剤と酵素が結合する機会が減るので、阻害剤の影響は小さくなる。
一方、“非競争的阻害”では、酵素が基質と結合しているかどうかに関わらず、酵素のアロステリック部位に阻害剤が結合する。そのため、基質濃度に関わらず、阻害剤の濃度に応じた一定数の酵素が、常に阻害作用を受け続けることになる。
【補足】
- 代謝(生体内の化学反応。例えば”光合成“や”呼吸“など。)
- 触媒(化学反応を促進または抑制する物質。)
- 酵素(生体内ではたらく生体触媒。タンパク質を主成分としている。)
- 変性(加熱やpH変化などにより、タンパク質の立体構造が変化し、タンパク質の性質が変化すること。)
- 失活(酵素タンパク質が変性することで、触媒としての機能を失うこと。)
- 酵素-基質複合体(酵素の活性部位に、基質が結合した状態。)
- 最大反応速度(全ての酵素が酵素ー基質複合体を形成しているときの反応速度。)
- 基質特異性(それぞれの酵素タンパク質は特有の立体構造をもち、特に基質と結合する部分“活性部位”)
- ミカエリス定数(酵素の反応速度が最大反応速度の1/2になる時の基質濃度。ミカエリス定数Kmが小さいほど、酵素と基質は結合しやすい。)
- ミカエリス・メンテン式(酵素の反応速度は、最大反応速度(Vmax)、基質濃度[S]、ミカエリス定数(Km)によって決まる。)
- ラインウィーバー・バーク式(ミカエリス・メンテン式の両辺の逆数を取り、一次関数の形にした式。縦軸切片&横軸切片から、最大反応速度&ミカエリス定数を求められる。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【79】ミカエリス定数
ミカエリス定数(Km)は、酵素と基質の”結合しやすさ”を表している。
ミカエリス定数(Km)は、酵素基質複合体の濃度[ES]に対する酵素濃度[E]と基質濃度[S]の割合なので、ミカエリス定数(Km)が”小さい”ほど、酵素と基質が”結合しやすい”(酵素-基質複合体を作りやすい)ことになる。
酵素の種類ごと、同じ酵素でも複数の基質がある場合は基質の種類ごとに、固有のミカエリス定数がある。
〈基質濃度と反応速度の関係を表したグラフ〉では、ミカエリス定数(Km)は、反応速度(V)が最大反応速度(Vmax)の1/2になる時の基質濃度[S]とちょうど一致する。
したがって、ミカエリス定数(Km)の値が“小さい”ほど、グラフの傾きが”大きく”なり、酵素は基質と結合しやすい(酵素-基質複合体をつくりやすい)ことになる。
酵素反応の反応速度(V)は、ミカエリス定数(Km)と最大反応速度(Vmax)、基質濃度[S]を使った”ミカエリス・メンテン式”で表わすことができる。
ミカエリス・メンテン式の両辺の逆数をとると一次関数の形になる。
1/[S]と1/Vの関係(基質濃度と反応速度の関係)をグラフにできれば、縦軸切片から最大反応速度(Vmax)を、さらにグラフの傾きからミカエリス定数(Km)を近似することができる。
【補足】
- 代謝(生体内の化学反応。例えば”光合成“や”呼吸“など。)
- 触媒(化学反応を促進または抑制する物質。)
- 酵素(生体内ではたらく生体触媒。タンパク質を主成分としている。)
- 変性(加熱やpH変化などにより、タンパク質の立体構造が変化し、タンパク質の性質が変化すること。)
- 失活(酵素タンパク質が変性することで、触媒としての機能を失うこと。)
- 酵素-基質複合体(酵素の活性部位に、基質が結合した状態。)
- 最大反応速度(全ての酵素が酵素ー基質複合体を形成しているときの反応速度。)
- 基質特異性(それぞれの酵素タンパク質は特有の立体構造をもち、特に基質と結合する部分“活性部位”)
- ミカエリス定数(Km=[E]×[S]/[ES]。酵素の反応速度が最大反応速度の1/2になる時の基質濃度と一致する。)
- ミカエリス・メンテン式(酵素の反応速度V=最大反応速度(Vmax)×基質濃度[S]/(Km+[S]))
- ラインウィーバー・バーク式(ミカエリス・メンテン式の両辺の逆数を取り、一次関数の形にした式。縦軸切片&横軸切片から、最大反応速度&ミカエリス定数を求められる。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【78】酵素反応と基質濃度
酵素の濃度[E]を変えずに、基質濃度[S]だけを変えると、“化学平衡に達するまでの時間”と“最終的な生成物量”が変化する。
全ての酵素が酵素-基質複合体となる程度まで十分に基質濃度[S]が高ければ、基質濃度[S]を多少変えても反応速度(最大反応速度:Vmax)は変わらない。
ただし、反応が進んで基質が少なくなり、酵素-基質複合体を作らない酵素が増えてくる(酵素と基質がなかなか出会えない)程度まで基質濃度[S]が低下すると、反応速度も低下する。
【補足】
- 代謝(生体内の化学反応。例えば”光合成“や”呼吸“など。)
- 触媒(化学反応を促進または抑制する物質。)
- 酵素(生体内ではたらく生体触媒。タンパク質を主成分としている。)
- 変性(加熱やpH変化などにより、タンパク質の立体構造が変化し、タンパク質の性質が変化すること。)
- 失活(酵素タンパク質が変性することで、触媒としての機能を失うこと。)
- 酵素-基質複合体(酵素の活性部位に、基質が結合した状態。)
- 最大反応速度(全ての酵素が酵素ー基質複合体を形成しているときの反応速度。)
- 基質特異性(それぞれの酵素タンパク質は特有の立体構造をもち、特に基質と結合する部分“活性部位”)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【77】酵素反応と酵素濃度
基質濃度を変えずに、酵素の濃度だけを変えると、生成物の量は変わらずに、反応速度だけが変化する。
【補足】
- 代謝(生体内の化学反応。例えば”光合成“や”呼吸“など。)
- 触媒(化学反応を促進または抑制する物質。)
- 酵素(生体内ではたらく生体触媒。タンパク質を主成分としている。)
- 変性(加熱やpH変化などにより、タンパク質の立体構造が変化し、タンパク質の性質が変化すること。)
- 失活(酵素タンパク質が変性することで、触媒としての機能を失うこと。)
- 酵素-基質複合体(酵素の活性部位に、基質が結合した状態。)
- 最大反応速度(全ての酵素が酵素ー基質複合体を形成しているときの反応速度。)
- 基質特異性(それぞれの酵素タンパク質は特有の立体構造をもち、特に基質と結合する部分“活性部位”)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【76】酵素反応と化学平衡
酵素反応が進むと、時間に伴って生成物量[濃度]が上昇するけれども、徐々に上昇は緩やかになり、やがて止まる。
一見すると反応が停止した様に見えるけれど、可逆的な酵素反応では、正反応(基質→生成物)と逆反応(基質←生成物)が同時に進行している。
化学反応の速度は基質の濃度に比例するので、反応初期は基質濃度が高いために〈正反応の速度〉が〈逆反応の速度〉を上回る。
反応が進むと、基質濃度が低くなるので〈正反応の速度〉は低下し、一方で生成物濃度が高くなるので〈逆反応の速度〉は上昇する。
やがて、〈正反応の速度〉と〈逆反応の速度〉が等しくなると、反応が停止した様に見える化学平衡の状態になる。
平衡状態に達しても、基質や生成物の濃度が変化すれば〈正反応の速度〉と〈逆反応の速度〉のバランスが崩れて、化学平衡は解消する。
光合成や呼吸など、実際の生体内では、ある酵素反応の生成物は、次の酵素反応の基質として消費されることが多いので、個々の酵素反応が化学平衡に達することは少ない。
【補足】
- 代謝(生体内の化学反応。例えば”光合成“や”呼吸“など。)
- 触媒(化学反応を促進または抑制する物質。)
- 酵素(生体内ではたらく生体触媒。タンパク質を主成分としている。)
- 変性(加熱やpH変化などにより、タンパク質の立体構造が変化し、タンパク質の性質が変化すること。)
- 失活(酵素タンパク質が変性することで、触媒としての機能を失うこと。)
- 酵素-基質複合体(酵素の活性部位に、基質が結合した状態。)
- 基質特異性(それぞれの酵素タンパク質は特有の立体構造をもち、特に基質と結合する部分“活性部位”)
- 不可逆反応(燃焼反応や中和反応など、一方向にしか進まない化学反応。)
- 可逆反応(両方向に進む化学反応。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【75】窒素同化
生物は、多数のアミノ酸が結合したタンパク質、DNAやRNAなどの核酸、光合成色素など、様々な有機窒素化合物を必要としている。
植物は、土壌中の“アンモニウムイオン”や“硝酸イオン”を取り込み、窒素同化によって、様々な有機窒素化合物を合成している。
アンモニウムイオンや硝酸イオンとして根から取り込まれた窒素は、アミノ基(-NH2)として、グルタミンからグルタミン酸へ受け渡され、さらに様々な有機酸(カルボン酸)に結合することで、様々なアミノ酸が合成される。
【補足】
- アミノ酸(アミノ基-NH2とカルボキシ基-COOHを持つ有機窒素化合物。生物は20種類のアミノ酸を様々な組み合わせで連結し、必要なタンパク質を合成している。)
- グルタミン酸(アミノ酸の一種。昆布やトマトに多く含まれる“旨味”の成分。中枢神経では、神経伝達物質としても利用されている。)
- グルタミン(アミノ酸の一種。植物の窒素同化では、外界からの窒素成分を最初に取り込む。)
- ケトグルタル酸(ケトン基-COを持つ有機酸。呼吸のクエン酸回路にも登場するC5化合物。特にカルボキシ基-COOHとケトン基-COが隣り合うものを“α(アルファ)ケトグルタル酸”と呼ぶ。)
- カルボン酸(カルボキシ基-COOHを持つ酸性の有機物。乳酸や酢酸、呼吸でも登場するピルビン酸やクエン酸、光合成でも登場するホスホグリセリン酸など、生物体内の有機酸には“カルボン酸”が多い。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂