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高校生物の予習&復習&自習

【30】トリプトファンオペロン

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トリプトファン

消化酵素、ホルモン、抗体、サイトカイン、神経伝達物質など...。生物には、“必要な時”に“必要な物質”を用意する仕組みがある。

原核生物の大腸菌も、“トリプトファンが無い時(トリプトファンが欲しい時)”に“トリプトファン合成酵素”を用意して、トリプトファンを合成できる。

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①トリプトファンが無ければ合成酵素が必要

遺伝情報をDNAからmRNA に“転写”し、さらにmRNAからタンパク質に“翻訳”するにも、資源(ヌクレオチドやアミノ酸、トリプトファンの前駆体なども!)とエネルギー(ATP)が必要になる。大腸菌にしてみれば、トリプトファンが充分に有る時は、あえてトリプトファン合成酵素”の遺伝子を発現(転写&翻訳)してまでトリプトファンを合成する必要はない。

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②トリプトファンが有れば合成酵素は不要

大腸菌の“トリプトファンオペロン”では、トリプトファンと結合した調節タンパク質が、“リプレッサー”(抑制因子)として、トリプトファン合成に関わる5つの遺伝子の発現をまとめて抑制している。

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トリプトファンオペロン

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【補足】

  • トリプトファン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一つ。略号は“Trp”または“W”。5種類の酵素により、グルタミンなどから段階的に合成される。)
  • 調節遺伝子(“調節タンパク質”の遺伝情報が書き込まれた“塩基配列”。)
  • 調節タンパク質(他の遺伝子の発現を調節するタンパク質。転写を抑制する場合は“リプレッサー”、転写を促進する場合は“アクチベーター”と呼ばれることもある。)
  • オペレーター(原核生物におけるDNAの転写調節に関わる“塩基配列”。調査タンパク質が結合することで、複数の遺伝子の発現を一括して抑制、または促進する。)
  • プロモーター(遺伝子の発現に先立って、RNAポリメラーゼが結合する“塩基配列”。プロモーターにRNAポリメラーゼが結合しなければ、mRNAが合成されず、遺伝子は発現しない。)
  • 構造遺伝子(mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される塩基配列。トリプトファンオペロンでは、trpE,trpD,trpC,trpB,trpAの遺伝子群は“構造遺伝子”だけれど、プロモーターやオペレーターは“構造遺伝子”ではない。)
  • オペロン(原核生物において、共通の調節タンパク質とオペレーターにより、一括して転写調節を受ける連続する複数の構造遺伝子。もしくは、プロモーター領域&オペレーター領域&複数の構造遺伝子のセット。原核生物にはイントロンが無いため、複数の構造遺伝子はまとめて1本のmRNAに転写される。)
  • エキソン(DNAからmRNA前駆体に”転写“され、さらにmRNAからタンパク質に”翻訳“される遺伝情報。)
  • イントロン(DNAからmRNA前駆体に”転写“されるものの、mRNAからタンパク質には”翻訳“されない遺伝情報。原核生物では見つかっていない。)
  • スプライシング(真核生物において、mRNA前駆体から”イントロン“を切り取り、”エキソン“だけを繋げてmRNAを作る手続き。)

【参考資料】

  • 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
  • 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
  • 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
  • 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
  • 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
  • 福岡伸一(2009).『世界は分けてもわからない』.講談社: