【59】視細胞と視物質
15秒ごとに“赤リンゴ”→“全面白”→“全面黒”と画像が切り替わります。
まず、“赤リンゴ”を15秒間見つめてください。
15秒後、“全面白”に切り替わると、どのように見えるでしょうか?
実験成功のコツは、“視線を固定すること”と“瞬きを我慢すること”です。“全面白”に切り替わった後に、瞬きを繰り返すのは良いようです。
“全面黒”で眼を休めてから、もう一度試してみて下さい。次は“青緑リンゴ”です。色の変化も気にしてみましょう。
15秒後、“全面白”のはずなのに、“赤リンゴ”が見えてきませんか?
ヒトの網膜には、3色(青,赤,緑)の光にそれぞれ反応する3種類の“錐体細胞”と、色は判別できないけれど明暗に敏感な“桿体細胞”が、多数敷き詰められている。
3種類の“錐体細胞”には、それぞれ青色光、赤色光、緑色光で分解される視物質(フォトプシン)が蓄えられていて、視物質(フォトプシン)が分解されると、錐体細胞から視神経に興奮が伝わる。
“桿体細胞”にも視物質(ロドプシン)が蓄えられていて、視物質(ロドプシン)が分解されると、桿体細胞から視神経に興奮が伝わる。
最後の実験は”信号機“です。信号機の周りの色(明るさ)も含めて、“全面白”に切り替わった時の見え方を予想してみよう。
急に明るくなると、視細胞(錐体細胞や桿体細胞)に蓄えられていた視物質(フォトプシンやロドプシン)が大量に分解されて、脳は『まぶしい』と感じる。しばらくすると、少しずつ合成された視物質が少しずつ分解される状態になるので、脳は『それなりの明るさ』と感じるようになる(明順応)
急に暗くなると、視細胞(錐体細胞や桿体細胞)の視物質(フォトプシンやロドプシン)が不足しているために、脳は『暗い』と感じる。しばらくすると、少しずつ合成された視物質が蓄積して分解量が増えるので、脳は『それなりの明るさ』を感じられるようになる。(暗順応)
【補足】
- 網膜(脊椎動物の眼球では、内側から、視神経+連絡細胞+視細胞の三層構造になっている。視神経が眼球の内側に配線しているために、視神経の出口として“盲斑”ができてしまう。)
- 視細胞(光を受容する感覚細胞。桿体細胞&錐体細胞。)
- 桿体細胞(視物質としてロドプシンを蓄える。色は判別できないけれど、微かな光でも認識できる。)
- 錐体細胞(視物質としてフォトプシンを蓄える。赤、青、緑のそれぞれの色の光にだけ反応する3種類の錐体細胞がある。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂