【42】カエルの発生
カエルやイモリ(両生類)は、ヒト(哺乳類)と同じ脊椎動物ということもあり、発生の仕組みがよく研究されてきた。
哺乳類は体内受精、鳥類や爬虫類は硬い卵殻の中で発生が進むため、発生の様子を観察し難い。
一方、両生類は体外受精で、卵外被も透明なので発生過程を観察しやすい。
【関連記事】
【補足】
- 発生(受精卵が個体になるまでの成長過程。)
- 胚(受精卵が個体になるまでの間の状態。)
- 個体(摂食や光合成などによって外界からエネルギーを摂取できるようになった状態。)
- 卵割(発生初期は、受精卵に割れ目が入るように体細胞分裂を繰り返す。)
- 割球(卵割によってできた細胞。)
- どどめ(桑の実。房状の実で、熟すと深紫色になる。)
- 原腸陥入(胚の一部が、胚の内側に向かって突出し、将来の消化管になる空間をつくる。)
- 内胚葉(胞胚期の植物半球の細胞から、将来は消化管の内壁に分化する。)
- 中胚葉(胞胚期の帯域の細胞から、将来は骨や筋肉などに分化して、内胚葉や外胚葉を“裏打ち”する。)
- 外胚葉(胞胚の動物半球の細胞から、将来は神経に分化する。神経にならなかった外胚葉は、表皮に分化する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【41】ウニの発生
ウニの卵は、ヒトの卵と同じように卵黄が均等に分布する等黄卵で、卵割の進み方もヒトとよく似ている。
受精卵を地球に見立てると、北極&南極が動物極&植物極、経線に沿った卵割を“経割”、緯線に沿っ卵割を“緯割”という。
卵割の進み方には、生物のグループごとに傾向がある。卵割の様式は、卵に含まれる卵黄の“量”と“分布”から大きな影響を受けている。
【関連記事】
【補足】
- 発生(受精卵が個体になるまでの成長過程。)
- 胚(受精卵が個体になるまでの間の状態。)
- 個体(摂食や光合成などによって外界からエネルギーを摂取できるようになった状態。)
- 卵割(発生初期は、通常の体細胞分裂より“短い細胞周期”で“同調した分裂”を繰り返す。)
- 割球(卵割によってできた細胞。卵割のたびに、割球は小さくなっていく。)
- 原腸陥入(胚の一部が、胚の内側に向かって突出し、将来の消化管になる空間をつくる。)
- 三胚葉(内胚葉&中胚葉&外胚葉)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【40】先体反応&表層反応
有性生殖においては、違う生物種の卵と精子が受精してはならない(種の識別)。
そして、一つの卵が複数の精子と受精することも許されない(多精拒否)。
ウニの場合、卵を取り囲むゼリー層(卵外被)が、同じ種類のウニの精子に対して“先体反応”を誘発する。精子の先体から放出された酵素(先体酵素)がゼリー層を分解しながら、精子は卵に近づいていく。
精子が卵の細胞膜までたどり着くと、先体突起の膜タンパク質“バインディン”と、卵の細胞膜の膜タンパク質“バインディン受容体”が種特異的に結合する。
もしゼリー層を突破できても、違う種類のウニの精子は卵に取りつけない。
精子と卵の細胞膜が融合すると、即座にナトリウムイオンが卵内に流れ込む。ナトリウムイオンによって卵の膜電位が一時的に変化する(1分程度)ことで、周囲の精子も一時的に動きを止める。
膜電位の変化で精子が停止している隙に、卵から“卵黄膜”がはがれて“受精膜”が立ち上がる。
“受精膜”ができると、膜電位が回復した後も2着目以降の精子は卵に近づけなくなり、“多精拒否”が完了する。
【補足】
- 受精(配偶子の中でも、大きくて泳がない”卵”と、小さくて泳ぐ“精子”が”接合”する場合と”受精”とよぶ。)
- 種の識別(違う生物種の卵と精子が受精してはならない。)
- 多精拒否(受精卵は、2番目以降にやってきた精子の侵入を防がなければならない。)
- 卵外被(卵細胞の細胞膜外側を取り囲む成分。鶏卵("卵"=黄身の部分)における卵白や卵殻膜や卵殻にあたる部分。ウニ卵には”ゼリー層”と呼ばれる卵外被がある。)
- 受精膜(受精前は、卵の細胞膜の外側に“卵黄膜”として張り付いている。受精後に、卵細胞の表層粒から放出された成分の働きで細胞膜の外側に立ち上げる。2番目以降の精子の侵入を防ぐ。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【39】動物の配偶子形成
有性生殖では、両親の配偶子が接合することで、両親の遺伝子を受け継いだ新しい個体が生まれる。配偶子は減数分裂により、両親の体細胞のDNAの半分を受け継いでいる。
生物のよって、接合する2つの配偶子の”大きさ”や”運動性”の違いの有無や程度は様々。とくに”大きさ”と”運動性”の両方に著しい違いがある場合は、大きくて泳がない方の配偶子を”卵”、小さくて泳ぐ方の配偶子を”精子”とよぶ。
大きい”卵”は、減数分裂のときに、小さい細胞(極体)と大きい細胞(卵細胞)に不均等な分裂をすることでできる。
一方、泳ぐ”精子”は、減数分裂の後に、精細胞が変形することでできる。
【関連記事】
【補足】
- 有性生殖(2つの個体の配偶子が接合することで、新しい個体が誕生する。)
- 配偶子(“接合”する直前の細胞。ゲノムを1セットだけ持つ。)
- 接合(2つの配偶子が合体して1つの細胞になること。“卵”と“精子”が接合する場合を特に“受精”と呼ぶ。)
- 接合子(2つの配偶子が接合してできた細胞。“卵”と“精子”が受精する場合を特に“受精卵”と呼ぶ。)
- 極体(減数分裂で卵細胞ができるとき生じる小さい細胞。減数第一分裂では、一次卵母細胞が二次卵母細胞と第一極体に分裂する。原数台に分裂では、二次卵母細胞が卵細胞と第二極体に分裂する。卵細胞が極体を放出した部分を”動物極”とよぶ。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【38】植生の遷移
溶岩台地のような土壌も種も根もない土地でも、風雨にさらされて風化が進み、鳥や虫に運ばれてきた種子や胞子が発芽して、植物や菌類が根付くようになる。
生き物が暮らすようになれば、枯葉や遺骸や排泄物などが徐々に分解されて土壌ができる。
土壌ができると、より大きな植物が根付き、さらに多くの生き物が生活するようになり、やがて豊かな森になる。
森ができると、林冠の葉が光を遮り、林床は暗くなる。
明るいとよく育つ陽樹(コナラ、クヌギ、アカマツ、カラマツ、シラカンバ etc.)も、幼木は、親木の下の暗い林床では成長できない。
一方、明るいと陽樹に先を越されてしまう陰樹(タブノキ、シイ、カシ、ブナ、ミズナラ、トウヒ、シラビソ、コメツガ、エゾマツ、トドマツ etc.)も、暗い林床では陽樹より先に成長できる。
「売上」から「必要経費」を差し引くと、「利益」が残る。
植物の場合、「光合成速度」から「呼吸速度」を差し引くと、「見かけの光合成速度」が残る。
生産者全体では、「総生産量」から「呼吸量」を差し引くと、「純生産量」が残る。
遷移が進むと、やがて生態系全体での有機物の「総生産量」と「呼吸量」がほぼつりあうようになり、見かけ上の「純生産量」は徐々に小さくなって、現状維持の“極相林”となる。
【補足】
- 植生(その土地、地域ごとに生息している植物の種類。)
- 生物相(その土地、地域ごとに生息している生物の種類。)
- 遷移(ある土地の植生は、年月の経過とともに変化してく。)
- 腐植土層(動物の排泄物や死骸、植物の落枝落葉などが堆積し、微生物によって分解された有機物の層。いわゆる肥沃な土壌の層。)
- 陽樹(比較的明るい環境に適応した樹種。全般に成長速度は速いけれど、暗い環境ではあまり成長できない。風散布の小さい種子をつける植物が多い。)
- 陰樹(比較的暗い環境に適応した樹種。全般に成長速度は遅いけれど、暗い環境でもゆっくり成長できる。動物散布の大きい種子をつける植物が多い。)
- 極相(行き着くところまで遷移が進み、生物相が”極まった”状態。一見すると遷移が停滞しているが、倒木などによって部分的には遷移をくり返している。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【37】サンガー法
サンガー法(ジ・デオキシ法)を使うと、未知のDNAの塩基配列を明らかにできる。
DNA複製の際、DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)は、鋳型鎖と相補的なヌクレオチド鎖(新生鎖)の3‘末端に、新たなヌクレオチドを”脱水縮合”によって付け加える。
このとき、もし新生鎖の3'末端のヌクレオチドの糖が、DNA本来の"デオキシリボース"ではなく、3'位置の-OHが-Hになった”ジ・デオキシリボース”に入れ替っていると、DNAポリメラーゼは新たなヌクレオチドを付け加えることができず、新生鎖の合成はそこで止まってしまう。
ヌクレオチド鎖の伸長を止めるddNTP(ジ・デオキシリボヌクレオチド三リン酸)を利用すれば、未知のDNAの塩基配列を明らかにすることができる。
- 「塩基配列を明らかにしたいDNA」に、ヌクレオチド鎖の材料になる4種類のdNTP(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)、別々の色で蛍光標識した4種類のddNTP(ddATP,ddTTP,ddGTP,ddCTP)、DNAポリメラーゼとプライマーを加える。
- 1の“混合液”を、サーマルサイクラー(加熱と冷却を自動でくり返す装置)で複製(増幅)する。複製(増幅)のたびに、ddNTPが取込まれて途中で合成が止まった”様々な長さ”のヌクレオチド鎖ができる。
- 2の"様々な長さ"のヌクレオチド鎖を、アガロースゲル電気泳動にかけ、ヌクレオチド鎖の”長さ”の順に並べ替える。
- 3で並べ替えたヌクレオチド鎖(アガロースゲルの上に帯状の”バンド”として見える)の蛍光標識からA,T,G,Cを判別し、5’末端側(最も“長い”距離を泳動した、最も“短い”ヌクレオチド鎖の集まった”バンド”)から、順に塩基配列を読み取る。
DNA(デオキシリボ核酸)も酸なので、水溶液中では水素イオン(陽イオン)と電離して-に帯電しており、電気泳動によって大きさ(長さ)順に並べ替えることができる。
【参考資料】
【補足】
- PCR(ポリメラーゼ連鎖反応。DNAの特定の配列を増幅する方法。)
- ヌクレオチド(リン酸&糖&塩基の結合した分子。DNAやRNAの材料となる。DNAのヌクレオチドは、リン酸&デオキシリボース(糖)に、A,T,G,Cの4種類の塩基のどれかが結合している。)
- dNTP(デオキシリボヌクレオチド三リン酸。4種類のdNTA(dATP,dTTP,dGTP,dCTP)が連結して、DNAのヌクレオチド鎖ができる。)
- ddNTP(ジ・デオキシリボヌクレオチド三リン酸。dNTPでは、糖の3'位置に-OHがあるが、ddNTPは-Hになっている。そのためヌクレオチド鎖の3'末端にddNTPが結合すると、次のdNTP、あるいはddNTPは結合できない。)
- サーマルサイクラー(設定した温度や時間にしたがって、自動で加熱と冷却をくり返してくれる装置。PCRやサンガー法で活躍。)
- DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素。新生鎖の3'末端に、鋳型鎖と相補的なヌクレオチドを付け加えていく。プライマーが無ければヌクレオチド差を合成できす、5'末端にヌクレオチドを付加することもできない"わがまま酵素"。)
- アガロース(多数のガラクトースが結合した多糖類。寒天の主成分。アガロースゲル=純度の高い寒天。)
- アガロースゲル電気泳動(アガロースゲルに電流を流すことで、電荷をもつ分子を大きさ順に分離できる。大きい分子ほどゲルに邪魔されて移動しにくく、小さい分子ほど長い距離を移動する。)
- バンド(アガロースゲル電気泳動のさいに現れる帯状の模様。同じ大きさの分子が蓄積して”バンド”として見える。)
- 蛍光色素(特定の波長の光を照射すると、照射した波長とは違う波長の光を発する。)
- シークエンシング(サンガー法などにより、DNAの塩基配列を決定すること。)
- DNAシークエンサー(アガロースゲル電気泳動~塩基配列の読み取りまでを自動で行ってくれる装置。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【36】染色体の乗換え&遺伝子の組換え
ヒトの体細胞は、1組23本(23種類)の染色体(ゲノム)を両親から1組ずつ、合わせて2組46本持っている。体細胞が2組のゲノムを持つ状態(複相)になるには、減数分裂で染色体数が半減し、1組のゲノムを持つ状態(単相)の配偶子(卵細胞や精細胞)どうしが受精しなければならない。
減数分裂では染色体が縦裂するため、もともと同じ親から受け継いだ染色体上に位置(連鎖)する遺伝子は、行動を共にすることが多い。
実際には、相同染色体が対合して縦裂する際、染色体の一部が交差して入れ替わること(染色体の乗換え)がある。同じ染色体上に位置(連鎖)する遺伝子であっても、遺伝子間距離が離れているほど、”染色体の乗換え“にともなって、遺伝子が入れ替わる(遺伝子の組換えが起こる)可能性が高い。
“染色体の乗換え”にともなって“遺伝子の組換え”が起これば、様々な組み合わせで遺伝子を持つ染色体が、配偶子に受け継がれる。
有性生殖では、両親の配偶子が受精して、子(新個体)が誕生する。相同染色体の対合&乗換えによって、同じ個体がつくる配偶子に様々な遺伝子の組合せが生まれることで、同じ両親から様々な遺伝子の組み合わせの子が産まれることになる。
【補足】
-
有性生殖(配偶子の接合によって新しい個体を生じる。)
-
減数分裂(第一分裂の後、DNA複製を行わずに第二分裂を行うことで、染色体数が半減する。)
-
配偶子(単相の細胞。二つの配偶子が“接合”して、複相の“接合子”となる。)
- 受精(卵細胞と精細胞のように、形や運動性の異なる配偶子どうしが接合する場合を”受精“という。)
- 連鎖(複数の遺伝子座が、同じ染色体上に存在する状態、あるいは、同じ染色体上に存在する複数の遺伝子が、同じ配偶子に分配される状況。)
- 乗換え(減数第一分裂に対合した相同染色体が互いに交錯し、染色体が部分的に入れ替わる現象。)
- キアズマ(染色体の”乗換え“の際に、染色体が交差している部分)
- 組換え(染色体の”乗換え“にともなって、連鎖する遺伝子が入れ替わる現象)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【35】硬葉樹林と雨緑樹林
砂漠(サハラ砂漠とピラミッドとラクダ?)、サバンナ(灌木とライオン家族とシマウマの群れ?)、ステップ(大草原と遊牧民?)、熱帯多雨林(アマゾン河とジャングル?)・・・など、世界のバイオーム(生物群系)の中でも、硬葉樹林(地中海性気候)と雨緑樹林(熱帯モンスーン気候)は、ややイメージしづらい。
大まかには、赤道付近(赤道低圧帯)では低気圧が発達して年中雨が降るので「熱帯多雨林」に、中緯度地域(中緯度高圧帯)では高気圧が発達して乾燥するので「砂漠」になる。
地球の地軸は23.4度傾いているので、”赤道低圧帯”と”中緯度高圧帯”は、夏は高緯度側に、冬は低緯度側に”ずれる”。
そのため北半球では、夏には「熱帯多雨林」の北側(高緯度側)にあたる「雨緑樹林」に多く雨が降り、「砂漠」の北側(高緯度側)にあたる「硬葉樹林」が乾燥する。逆に、冬は「雨緑樹林」は乾季となり、「硬葉樹林」にはそこそこ雨が降る。
「雨緑樹林」では、夏の雨季は光も水も豊富なので森林が発達し、冬の乾季は光も水も乏しいので落葉する。
「硬葉樹林」では、夏は光は豊富でも水が不足し、冬は光は不足でも水はそこそこ手に入るので、乾燥に耐えられるクチクラの発達した小さな硬い葉を一年中付けている。
【補足】
- バイオーム(生物群系/地域ごとの生態系を構成する生物のまとまり。気温や降水量、季節の有無など、気候の違いによって、さまざまなバイオームがある。植物は簡単に移動できず気候の影響が大きいので、バイオームには植生を反映した「照葉樹林」や「夏緑樹林」などの名称が多い。)
- 硬葉樹林(夏の乾燥に耐えるため&雨の降る冬でも光合成を続けるため、硬くて小さい葉をつける常緑樹が多く見られるバイオーム。夏に乾燥する地中海性気候の地域に広がる。地中海沿岸ではオリーブやコルクガシや月桂樹、オーストラリアではユーカリなど、地域ごとの植生は異なる。)
- 雨緑樹林(熱帯でも、チークやラワンなど落葉広葉樹が多く見られるバイオーム。乾季に落葉して林床まで光が届くので、常緑樹の多い熱帯多雨林よりも、草本層が発達する。)
- 低気圧(上昇気流が発生して、周辺より気圧が低い状態。雨が降ることが多い。上昇した大気は、上空で膨張して温度が下がり、大気中の水分が結露して雨雲が発達する。)
- 高気圧(下降気流が発生して、周辺より気圧が高い状態。晴れることが多い。下降した大気は、地表付近で圧縮して温度が上がり乾燥する。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【34】インスリン&グルカゴン
ヒトの血糖値は、空腹時で約0.1%ほどに保たれている。“血糖”は血液中のグルコース(ブドウ糖)のこと。グルコースは“呼吸”の基質であり、細胞がエネルギーを獲得し続ける(ATPを合成&分解し続ける)には、常に一定量が血液中に流れていなければならない。
食事の後は、小腸から血液中にグルコースが吸収され、血糖値(血液中のグルコース濃度)が上がる。
すい臓の“ランゲルハンス島”のB細胞は、血糖値の上昇に気づくと、血糖値を下げるホルモン“インスリン”を血液中に分泌(内分泌)しはじめる。
肝細胞や筋細胞が“インスリン”を受け取ると、血液中のグルコース(血糖)を取り込んで、“グリコーゲン”に合成して“貯蓄”する。
血液中のグルコース(血糖)が減れば、インスリンの分泌も減り、血糖値は一定に保たれる。
小腸からのグルコース吸収が無い“食間”は、すい臓の“ランゲルハンス島”にいるA細胞が、血糖値を上げるホルモン“グルカゴン”を分泌し続けている。
肝細胞や筋細胞が“グルカゴン”を受け取ると、“貯蓄”していた“グリコーゲン”を切り崩して“グルコース”に分解し、血液中に放出する。
細胞たちは、血液中のグルコース(血糖)をエネルギー源として“呼吸”に使いながら、次の食事までを何とかやり過ごす。
【関連記事】
【補足】
- グルコース(単糖類/ブドウ糖/細胞内の“呼吸”によって段階的に二酸化炭素と水に分解され、ATPを合成するエネルギー源になる。)
- 血糖(血液中の糖分。ヒトの血糖値は空腹時で、0.1[%]=0.1[g/100ml]=100[mg/100ml]ほど。)
- グリコーゲン(多数のグルコースが結合した多糖類。高分子で血しょうに溶けない。肝臓や筋肉に蓄えられている。)
- インスリン(すい臓のランゲルハンス島B細胞から分泌されるホルモン。肝細胞や筋細胞などに作用し、グリコーゲンの合成や呼吸を促進することで血糖値を下げる。)
- グルカゴン(すい臓のランゲルハンス島A細胞から分泌されるホルモン。肝細胞や筋細胞などに作用し、グリコーゲンの分解を促進することで血糖値を上げる。)
- 肝門脈(小腸から肝臓へ向かう静脈。食後に血糖値が高い血液が流れる。)
- 肝臓(ヒトでは最大の臓器。常に全身の約30%もの血液が流れている。血糖値の調節、尿素の合成、アルコールの分解、血しょう中のタンパク質諸々の合成など、多彩な仕事を引き受けている。)
- すい臓(インスリンやグルカゴンなどのホルモンを合成&分泌する“内分泌腺”であると同時に、リパーゼやトリプシンなどの消化酵素を合成&分泌する“外分泌腺”でもある。)
- ランゲルハンス島( A細胞やB細胞が集まって“島”のように見える組織。すい臓内に100万個程ある。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【33】間脳視床下部と脳下垂体
『視床下部』は 『間脳』の一部(間脳の視床下部)だけれど、『間脳』から垂れ下がった『脳下垂体』は『間脳』とは別の器官である。
『脳下垂体』からは、多種多様なホルモンが血液中に分泌(内分泌系)されている。
ヒトの『脳下垂体』は大きく前葉と後葉に分かれていて、それぞれホルモンの分泌方法が違う。
『脳下垂体・前葉』から分泌される成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなどは、同じ『脳下垂体・前葉』で合成されている。
一方、『脳下垂体・後葉』から分泌されるバソプレシンは、実は『間脳・視床下部』の神経分泌細胞で合成されている。
とはいえ、『脳下垂体・前葉』でのホルモンの合成&分泌も、元をたどれば『間脳・視床下部』からの分泌される別のホルモンによって調整されている。
したがって内分泌系の中枢は、やはり『間脳の視床下部』ということになる。
【関連記事】
【補足】
- 間脳(大脳の内側に位置する。大脳を裏打ちするように広がるドーム状の構造をしている。上部の“視床”と、下部の“視床下部”とからなる。自律神経系と内分泌系の中枢。)
- 神経分泌細胞(間脳の視床下部にある細胞。神経細胞がホルモンを合成&分泌するように分化したもの。)
- 脳下垂体(間脳から垂れ下がる構造。前葉、中葉、後葉からなる。ヒトの中葉はあまり発達していない。)
- 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(間脳・視床下部の神経分泌細胞で合成され、間脳・視床下部の血管に分泌されるホルモン。脳下垂体の前葉に作用し、甲状腺刺激ホルモンの分泌を促進する。)
- 甲状腺刺激ホルモン(脳下垂体の前葉で合成&分泌されるホルモン。甲状腺に作用し、チロキシンの分泌を促進する。)
- 副腎皮質刺激ホルモン(脳下垂体の前葉で合成&分泌されるホルモン。副腎皮質に作用し、糖質コルチコイドの分泌を促進する。)
- 成長ホルモン(脳下垂体の前葉で合成&分泌されるホルモン。)
- バソプレシン(間脳・視床下部の神経分泌細胞で合成され、脳下垂体の後葉の血管に分泌されるホルモン。腎臓に作用し、集合管からの水分の再吸収を促進する。抗利尿ホルモン。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【32】真核生物の転写調節
真核生物の遺伝子発現は、“大変に複雑”な方法で制御されている。遺伝子発現の第一段階“転写”は、RNAポリメラーゼ(RNA合成酵素)がDNAの“プロモーター”領域に結合することではじまる。けれども、RNAポリメラーゼが“プロモーター”領域に結合したり、結合した後にDNAの二重らせんを解きながらDNA上を移動したりするには、様々な“基本転写因子”の協力が欠かせない。
すべての“基本転写因子”がそろい、RNAポリメラーゼが“プロモーター”領域に結合して準備万端整っても、『転写開始』の最終決定権は”調節タンパク質“が握っている。
転写を促進する調節タンパク質”アクチベーター“が結合すれば『転写開始!』、転写を抑制する調節タンパク質”リプレッサー“が結合すれば『転写中止!』となってしまう。
さらに、 真核生物の長大なDNA(ヒトのDNAは細胞1個あたり約2m!?)は、ヒストン(タンパク質)に巻き取られた状態で核の中に収納されている。基本転写因子や調節タンパク質がDNAに結合するには、邪魔なヒストンやメチル基が取り除かれていなければならない。
【関連記事】
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【補足】
- 遺伝子の発現(遺伝情報が、DNAからmRNAに転写され、さらにポリペプチド鎖に翻訳され、フォールディングを経て、特定の立体構造を持ったタンパク質が。)
- RNAポリメラーゼ(RNA合成酵素。DNAの塩基配列に対し、相補的なRNAのヌクレオチド鎖を合成する。DNAポリメラーゼと同じく、RNAのヌクレオチド鎖の3’末端に、新たにヌクレオチドを付加する。プライマーは必要ない。)
- プロモーター(RNAポリメラーゼが結合するDNAの領域。遺伝子の上流側にある。)
- 調節タンパク質(転写を促進するものを“アクチベーター”、転写を抑制するものを“リプレッサー”と呼ぶ。)
- 転写調節領域(調査タンパク質が結合するDNAの領域。アクチベーターが結合する“エンハンサー”領域と、リプレッサーが結合する“サイレンサー”領域がある。)
- 基本転写因子(真核生物において、RNAポリメラーゼ以外に、転写に“絶対必要”な諸々のタンパク質。RNAポリメラーゼとプロモーターの結合を助ける因子や、RNAポリメラーゼと調節タンパク質の結合を助ける因子、DNAの二重らせんを解く因子などがある。)
- メチル化(DNAの塩基にメチル基が付加されると、“転写”が抑制される。DNAのメチル化により、転写に必要なタンパク質のDNAとの結合が阻害されたり、ヒストンとDNAとの結合が促進されたりする。)
- ヒストン(真核生物において、DNAを巻き取るタンパク質。)
- ヌクレオソーム(1つのヒストンに、DNAが2周巻きついた状態。直径10nm程。)
- クロマチン構造(多数のヌクレオソームが規則的に折り畳まれた状態。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【31】ラクトースオペロン
ラクトース(乳糖)は、ラクトース分解酵素によって、グルコース(ブドウ糖)とガラクトースに分解される。ラクトースを母乳に含む哺乳類も、原核生物の乳酸菌や大腸菌も、ラクトース分解に関わる遺伝子を持っている。
大腸菌にとっては、二糖類のラクトースより単糖類のグルコースの方が、すぐに呼吸に利用できる分『ありがたい』のかもしれない。培地にグルコースが有れば、ラクトースの有無にかかわらず、大腸菌は『とにかく!』グルコースを細胞内に取り込んで利用する。培地にグルコースが無くてラクトース(乳糖)しかないときだけ、大腸菌は『しかたなく?』ラクトースを細胞内に取り込んで分解し、グルコースを得る。
大腸菌にしてみれば、グルコースが無くてラクトースが有るときだけ、ラクトース分解に関わる遺伝子が発現すればよい。
遺伝子が発現するには、RNAポリメラーゼが遺伝子の上流のプロモーター領域に結合しなければならない。RNAポリメラーゼとプロモーター領域の結合は、調節タンパク質”アクチベーター“が助ける一方、調節タンパク質”リプレッサー“によって邪魔される。
大腸菌の“ラクトースオペロン”では、”アクチベーター”(促進因子)は、グルコースが有るときは合成されず、グルコースが無いときに合成される。”リプレッサー”(抑制因子)は、ラクトースが有るときは、ラクトースの代謝産物(アロラクトース)と合体してオペレーター領域に結合しないが、ラクトースが無いときはオペレーター領域に結合してしまう。
①グルコースが無くて(”アクチベーター”が結合して)、ラクトースが有る(”リプレッサー”が結合できない)ときだけ、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合して転写がはじまる。
②グルコースが有れば(”アクチベーター”が結合しなければ)、ラクトースが有っても(”リプレッサー”が結合していなくても)、RNAポリメラーゼはプロモーターに結合できず、転写がはじまらない。
③グルコースが無くても(”アクチベーター”が結合しても)、ラクトースが無ければ(”リプレッサー”が結合していれば)、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合できずに、転写がはじまらない。
④グルコースが有り(”アクチベーター”が結合しておらず)、ラクトースも無ければ(”リプレッサー”も結合していれば)、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合できるわけもなく、転写がはじまることはない。
【関連記事】
【補足】
- ラクトース(乳糖。グルコースとガラクトースが結合した二糖類。哺乳類の乳汁に含まれる。乳児では、デンプンを分解するマルトースより、ラクトースを分解するラクターゼの活性が高い。)
- アロラクトース(ラクトースの代謝産物で、ラクトースの異性体。ラクトース分解酵素のβガラクトシダーゼがラクトースを分解しつつ、一部のラクトースをアロラクトースに作り変える。)
- 調節遺伝子(“調節タンパク質”の遺伝情報が書き込まれた“塩基配列”。)
- 調節タンパク質(他の遺伝子の発現を調節するタンパク質。転写を抑制する場合は“リプレッサー”、転写を促進する場合は“アクチベーター”と呼ばれることもある。)
- オペレーター(原核生物におけるDNAの転写調節に関わる“塩基配列”。調査タンパク質が結合することで、複数の遺伝子の発現を一括して抑制、または促進する。)
- プロモーター(遺伝子の発現に先立って、RNAポリメラーゼが結合する“塩基配列”。プロモーターにRNAポリメラーゼが結合しなければ、mRNAが合成されず、遺伝子は発現しない。)
- 構造遺伝子(mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される塩基配列。ラクトースオペロンでは、lacZ、lacY、lacAの遺伝子群は“構造遺伝子”だけれど、プロモーターやオペレーターは“構造遺伝子”ではない。)
- lacZ(βガラクトシダーゼ、いわゆる“ラクターゼ”の遺伝子。βガラクトシダーゼは、ラクトースをガラクトースとグルコースに加水分解しつつ、一部をアロラクトースに作り変える。)
- lacY(ラクトースを細胞内に取り込む膜タンパク質“ラクトース輸送体”の遺伝子。)
- lacA(アセチルCoAからラクトースにアセチル基を付け替える“アセチル基転移酵素”の遺伝子。)
- ガラクトシド(ラクトースなど、ガラクトースを構成要素として含む多糖類。結合の仕方によって、α-ガラクトシドとβ-ガラクトシドに分類される。)
- オペロン(原核生物において、共通の調節タンパク質とオペレーターにより、一括して転写調節を受ける連続する複数の構造遺伝子。もしくは、プロモーター領域&オペレーター領域&複数の構造遺伝子のセット。原核生物にはイントロンが無いため、複数の構造遺伝子はまとめて1本のmRNAに転写される。)
- エキソン(DNAからmRNA前駆体に”転写“され、さらにmRNAからタンパク質に”翻訳“される遺伝情報。)
- イントロン(DNAからmRNA前駆体に”転写“されるものの、mRNAからタンパク質には”翻訳“されない遺伝情報。原核生物では見つかっていない。)
- スプライシング(真核生物において、mRNA前駆体から”イントロン“を切り取り、”エキソン“だけを繋げてmRNAを作る手続き。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【30】トリプトファンオペロン
消化酵素、ホルモン、抗体、サイトカイン、神経伝達物質など...。生物には、“必要な時”に“必要な物質”を用意する仕組みがある。
原核生物の大腸菌も、“トリプトファンが無い時(トリプトファンが欲しい時)”に“トリプトファン合成酵素”を用意して、トリプトファンを合成できる。
遺伝情報をDNAからmRNA に“転写”し、さらにmRNAからタンパク質に“翻訳”するにも、資源(ヌクレオチドやアミノ酸、トリプトファンの前駆体なども!)とエネルギー(ATP)が必要になる。大腸菌にしてみれば、トリプトファンが充分に有る時は、あえてトリプトファン合成酵素”の遺伝子を発現(転写&翻訳)してまでトリプトファンを合成する必要はない。
大腸菌の“トリプトファンオペロン”では、トリプトファンと結合した調節タンパク質が、“リプレッサー”(抑制因子)として、トリプトファン合成に関わる5つの遺伝子の発現をまとめて抑制している。
【関連記事】
【補足】
- トリプトファン(タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の一つ。略号は“Trp”または“W”。5種類の酵素により、グルタミンなどから段階的に合成される。)
- 調節遺伝子(“調節タンパク質”の遺伝情報が書き込まれた“塩基配列”。)
- 調節タンパク質(他の遺伝子の発現を調節するタンパク質。転写を抑制する場合は“リプレッサー”、転写を促進する場合は“アクチベーター”と呼ばれることもある。)
- オペレーター(原核生物におけるDNAの転写調節に関わる“塩基配列”。調査タンパク質が結合することで、複数の遺伝子の発現を一括して抑制、または促進する。)
- プロモーター(遺伝子の発現に先立って、RNAポリメラーゼが結合する“塩基配列”。プロモーターにRNAポリメラーゼが結合しなければ、mRNAが合成されず、遺伝子は発現しない。)
- 構造遺伝子(mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される塩基配列。トリプトファンオペロンでは、trpE,trpD,trpC,trpB,trpAの遺伝子群は“構造遺伝子”だけれど、プロモーターやオペレーターは“構造遺伝子”ではない。)
- オペロン(原核生物において、共通の調節タンパク質とオペレーターにより、一括して転写調節を受ける連続する複数の構造遺伝子。もしくは、プロモーター領域&オペレーター領域&複数の構造遺伝子のセット。原核生物にはイントロンが無いため、複数の構造遺伝子はまとめて1本のmRNAに転写される。)
- エキソン(DNAからmRNA前駆体に”転写“され、さらにmRNAからタンパク質に”翻訳“される遺伝情報。)
- イントロン(DNAからmRNA前駆体に”転写“されるものの、mRNAからタンパク質には”翻訳“されない遺伝情報。原核生物では見つかっていない。)
- スプライシング(真核生物において、mRNA前駆体から”イントロン“を切り取り、”エキソン“だけを繋げてmRNAを作る手続き。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
- 福岡伸一(2009).『世界は分けてもわからない』.講談社:
【29】体細胞分裂と減数分裂
体細胞分裂では、間期(のS期)に複製された染色体が、1本ずつ赤道面に並ぶ。両極から伸びてきた紡錘糸が染色体(の動原体)に付着すると、染色体はそれぞれ縦に引き裂かれ(縦裂)、両極に移動していく。
減数分裂では、第1分裂、第2分裂と、2回の分裂が連続して進む。染色体の複製(DNA合成)は第1分裂前の間期(のS期)に行われるだけで、第1分裂後は染色体の複製(DNA合成)を行わないまま第2分裂に進む。
間期に複製された染色体は、第1分裂で相同染色体どうしが対合した“ニ価染色体”となり赤道面に並ぶ。両極から伸びてきた紡錘糸が二価染色体(の動原体)に付着すると、二価染色体はそれぞれ縦に引き裂かれ(縦裂)、両極に移動していく。
続く第2分裂で、さらに染色体が縦裂することで、染色体数もDNA量も半減する。
【補足】
- 核相(細胞の核1個あたりの染色体数やゲノム数。ヒトの体細胞は、ふつう23本×2セットの染色体=ゲノム2セットを持っていて、核相は”2n=46“や”複相“と表現する。一方、ヒトの卵細胞や精細胞は、体細胞の半分にあたる23本×1セットの染色体=ゲノム1セットしか持たず、核相は”n=23“や”単相“と表現する。)
- 有糸分裂(赤道面に並んだ染色体を“紡錘糸“が両極へ引き裂くことで、母細胞のDNAを娘細胞へ分配する細胞分裂の方法。)
- コルヒチン(タンパク質“チューブリン”に結合し、チューブリンが重合して微小管を形成することを阻害する。紡錘糸の形成を妨げるため、有糸分裂を阻害する。“コルヒチン処理”により“倍数体”を作ることができる。)
- 相同染色体(同形同大の染色体。ヒトの体細胞には、卵細胞から受け継いだ染色体23本と、それらに相同な精細胞から受け継いだ染色体23本、合わせて23対の相同染色体、合計46本の染色体が存在する。)
- ニ価染色体(DNA複製を完了した後の相同染色体どうしが、さらに対合した染色体。通常の染色体に対して、4倍のDNA量をもつ。減数分裂の第1分裂の前期〜中期見られる。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂
【28】DNA損傷と除去修復
DNA複製の際、DNAポリメラーゼが間違った塩基(ヌクレオチド)を付加してしまう誤り(ミスマッチ)や、紫外線や放射線、発癌性物質などの化学物質によって、塩基(ヌクレオチド)が置換や欠失してしまうことがある。
損傷したDNAの修復方法は様々で、DNA複製時のミスマッチをDNAポリメラーゼ自身が修正する“ミスマッチ修復”、損傷部分を除去&相補鎖を鋳型に新たに作り直す“除去修復”、相同染色体との組換えによって修復する方法などがある。
【補足】
- エンドヌクレアーゼ(ヌクレオチド鎖を“途中で”切断する加水分解酵素。特定の塩基配列を認識して切断する制限酵素も“エンドヌクレアーゼ”に含まれる。)
- エキソヌクレアーゼ(ヌクレオチド鎖を“末端から”分解する加水分解酵素。)
- DNAヘリカーゼ(DNAの二重らせん構造を解いて、2本のヌクレオチド鎖に分離する酵素。)
- DNAポリメラーゼ(DNA合成酵素/DNAのヌクレオチド鎖の3‘末端に、dNTPを付加する。)
- DNAリガーゼ(DNAのヌクレオチド鎖を連結する酵素。3‘末端と5’末端を連結する。)
- dNTP(デオキシリボヌクレオチド三リン酸/DNAのヌクレオチド鎖の材料になる。塩基部分がアデニン/A、チミン/T、グアニン/G、シトシン/Cの四種類がある。)
【参考資料】
- 吉里勝利(2018).『改訂 高等学校 生物基礎』.第一学習社
- 浅島 誠(2019).『改訂 生物基礎』.東京書籍
- 吉里勝利(2018).『スクエア最新図説生物neo』.第一学習社
- 浜島書店編集部(2018).『ニューステージ新生物図表』.浜島書店
- 大森徹(2014).『大学入試の得点源 生物[要点]』.文英堂